ご報告が遅くなりましたが、23日に行われたダヴィデ・ジョヴァンニ・トマシの演奏会に
お越しくださった皆様、ありがとうございました!
会場にいたお客様の中にはまるで自分が奇跡に遭遇してるのではないか、と感じた人もいたのではないでしょうか。
それくらい信じられないクオリティの演奏会でした。
難曲が続くプログラムでしたが、演奏会通して一度だけ僅かなビリ付きがあっただけ。
あとは無傷でノイズすらない完璧な演奏。
こう書いてしまうとテクニックが際立って聴こえるかもしれませんが、演奏は常に音楽的。
世界最高レベルの技術を持ったギタリストの演奏では1曲通してミスがない、という事には時折遭遇します。
ですが「今のは狙った音色、ニュアンスになってないんだろうな」と感じることは割とあることです。
しかし、トマシの演奏はそれすら感じさせなかった。
勿論トマシ自身はもっと上を望んで弾いてるのだと思いますが、音色やニュアンスは微塵も荒れることはなく常に洗練されていました。
使用楽器のP.ウッドフィールドからはラティス構造であることを感じさせない自然な伸びのある豊かな響き。
弦長はなんと635mm…!弦長短くても音色や音量には全く支障がないことを証明していました。
やっぱり弾きやすいのが一番ということですね。
※ちなみに今回のツアーで主催がYAMAHAとなっている個所ではP.ウッドフィールドではなくYAMAHAギターを使用しています。
あともう一つ印象的だったのは、聴衆に静かに音楽を聴いてもらえる空気感を創りだせること。
まあ演奏が良いから惹き込まれる、と言えばそれまでなのですが、それとは違うんですよね。
「静かに聴きたい!」と思わせてくれるというか。会場全体が楽器として成立してるように感じられたのです。
リハ中はテクニック的に難しくはないシンプルな箇所の音と音の繋ぎを、納得するまで何度も何度も
繰り返している様子が散見されました。
常に、その音楽の内容と会場の残響とギターの響きの減衰の中で、最も美しい箇所を捉えて次の音へと紡いでいく…
そんな姿勢が「空気感」を創り出しているのではないか、と感じました。
はい、全くの私見ですので的外れかもしれません。でも自分はそう感じたのです。
化け物みたいに弾けるギタリストが珍しくなくなってきてる今のギター界の中で
その化け物の群れの中から抜きん出る為に必要なものを1つだけじゃなく、幾つも体現している演奏会でした。
まだ26歳。10年後20年後には一体どんな演奏家になっているのでしょう?本当に楽しみでなりません。
写真左 今年GLC賞を獲得した逸材坂本和奏さんとのツーショット。
写真右 珍しく札幌の重鎮、赤坂孝吉先生が打ち上げに顔を出してくれました。
普段は辛口コメント多めですが、今回は大絶賛。